世界情勢が不安定な中で、事業を安定して継続していくことが年々厳しくなってきています。
業界再編や事業継承などの動きも活発化していくものと考えられますが、そのような環境下の中で企業買収やM&Aなどというワードをよく耳にします。
企業を買収することのようなイメージで捉えられることが多いようですが、実際のところ詳細までは分かりにくいものです。
ここでは企業買収とM&Aの違い、企業を買収する際の手法や仕組みやその選び方について解説します。
Contents
企業買収とM&Aの違いって何?
企業買収とM&Aの違いに関しては、多くの方が同じようなことであるとの認識を持っているようですが、実際は以下のような相違点があります。
企業買収とは
企業買収とは、買収目的で他社の株式を取得して、その企業の経営権を獲得することを指します。
買収する際には、買収する企業の全株式の過半数以上を買い取ることが必要で、買収されることで買収した会社の子会社やグループ会社になります。
従来の日本では、買収に対してよいイメージを持つ企業は多くなく、ほとんどの企業は買収に応じることはありませんでした。
しかし昨今では、外資系企業が国内でも活躍するケースも多くなり、買収も活発化しています。
M&Aとは
M&Aとは、Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略で、二つ以上の会社が一つの会社に合併してなることや、買収されて子会社になるようなことを指します。
つまり広域の意味では、企業買収もM&Aのプロセスの中の一部であり、買収や譲渡、合併、会社分割を含む広範の活動の総称のことをM&Aと言います。
M&Aでは、前述の合併や買収以外にも資本提携や業務提携を含む場合もあるので、経営面での協力関係も含まれることがあります。
買収側と売却側で異なるM&Aの主な目的
M&Aを行う際に、買収側と売却側とでは主な目的として次のようなことを検討して実行します。
買収側のM&Aの目的
買収側のM&Aの目的は以下のようになります。
- M&Aで事業成長に伴う時間を購入する
- 事業規模の拡大によるスケールメリットを算出する
- 既存企業にシナジー効果を促すため
M&Aで事業成長に伴う時間を購入する
事業成長において短期間で結果が出るケースは稀であり、一般的には多くの時間と労力を要します。
買収して企業を購入することで、既存事業の規模拡大や、新規事業への参入時間を大幅に短縮することができます。
ゼロから事業を立ち上げるよりも、事業展開の基盤が整っている企業を取り込む方が人材やノウハウ含めてスピード感のある展開が期待できます。
事業規模の拡大によるスケールメリットを算出する
競争が激しい市場においては、資金力はないものの優れた製品を製造している企業や独占的な発明をした企業を買収して、事業を拡大しスケールメリットを出すことが多々あります。
事業規模を拡大させることで、より効率のよい製品やサービスの提供を選択できるようにもなります。
既存企業にシナジー効果を促すため
M&Aをよく利用するケースとしては、自社の弱みを補填して強みを最大化させることができるシナジー効果を目的として実行されます。
新たなテクノロジーの導入やバリューチェーンにより業務効率化を図り、資金面や会計面などに総合的な効果をもたらす成長戦略としても期待できます。
売却側のM&Aの目的
売却側のM&Aの目的は以下のようになります。
- 後継者探しや事業継承の問題を解決できる
- 創業者の利益確定
- 短期間に事業投資から回収まで行える
後継者探しや事業継承の問題を解決できる
中小企業においては、事業の後継者選びは先々事業を継承する中での死活問題です。
従来は子供に事業を継がせるケースが一般的でしたが、高齢化や生活環境の多様性に伴い家業を継がない選択肢やご自身の代で会社をたたんで継がせないなどのような考えも増えてきました。
後継者を探しているケースでのM&Aは、近親者ではない第三者に会社を託して経営を存続させることができます。
創業者の利益確定
中小企業の多くは未上場なので、自社の株式を現金化することが難しい傾向にあります。
しかしM&Aを利用することで、株式をオーナーが譲渡して代わりに譲渡益を得ることができます。
新たな事業を始めたい際の資金調達や、単純に経営から離れて第二の人生を始めたい際に企業を売却し現金化したい場合などに利用されます。
短期間に事業投資から回収まで行える
一般的に事業投資は多くの時間を要して投資した資金を回収していきます。
特に研究や設備投資などを行った際には、回収までが長期計画になる傾向にあります。
このような場合に、M&Aを利用すると今後事業が伸びて好調になるであろう未来の予想収益を企業の価値としてみなされ算定されるので、企業価値を感じてくれる相手が見つかると利益回収を短期間で行うことができます。
M&Aの手法の種類
M&Aは大きく分けて「買収」「合併」があり、広義な意味では「提携」もM&Aに含まれます。
買収の中には更に細かく株式取得型の買収と事業譲渡型の手法があり、株式取得型の中に「株式譲渡」「株式交換」「株式移転」「第三者割当増資」があり、事業譲渡型の中に「事業譲渡」という種類があります。
また、合併の中には「新設合併」と「吸収合併」、提携の中には「資本参加」「合弁会社設立」があります。
買収の種類と仕組み
買収は買取先の企業の株式の取得もしくは、事業資産の取得を通して経営権や事業を譲り受けることを指します。
具体的な種類は以下のようになります。
株式取得型の手法
株式取得の仕組みは、4種類あります。
株式譲渡
株式譲渡は、売却側の株式を買収側が買い取り、売却側の経営権を買収側に移動させて買収側の子会社やグループ会社になる仕組みです。
M&Aの中では最も一般的な仕組みであり、多くのケースで100%の株式の移動があり、買収後は親会社と子会社の関係になります。
買収後に変更されるのは、主に株主と取締役を含む株を保有する方で、企業に勤める従業員などに大きな変更点がないのが特徴です。
買収後も会社が従来通り継続されるので、企業の強みをそのまま継承して引き継ぐことができます。
売却側のブランドや販売網を有効利用してシナジーを創出したい場合に有効です。
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株式交換
株式交換とは、対象会社を100%子会社化する際に主に用いられる手法で、企業買収を行う際の対価の支払いを自社の株式を交付することで行います。
株式交換は、自社の株式や新株発行など対価を支払うことができるので、新たな資金調達の必要がない点が特徴です。
売り手側が株式を現金化することが容易でないとあまりメリットがないので、一般的には上場企業が使用する仕組みになります。
株式交換後は、買収された企業が株主となるので株式の保有率によっては会社運営に影響を及ぼすこともあります。
株式移転
株式移転は、組織再編などの際に用いられ、既存の株式会社1社または複数社が新規に会社を設立して発行株式を全て取得させる手法です。
買収の際に必要な対価は、新たに設立した会社の株になるので資金調達の必要がなく完全子会社化することができます。
株式移転は、一般的に経営統合する際やホールディングカンパニー体制に移行する為に用いられ、既存会社を消滅させることなくグループシナジーの強化などを図る際に利用されます。
第三者割当増資
第三者割当増資は、株主であるか否かは関係なく第三者に新株を引き受ける権利を割り当てて発行する手法です。
M&Aにおいては、第三者割当増資で発行した株式を利用して、議決権の過半数や2/3以上を取得することを目的として実施されることがほとんどです。
第三者割当増資は他社との関係性を強化する際に活用され、資金を提供してもらう代わりに決議権を与えて目に見える提携関係の構築を図ります。
事業譲渡の手法
事業譲渡は、売却側の事業の全部または一部を譲渡する手法です。
一般的には、企業内の不採算事業の見直しや企業を存続させたまま再建したい場合に利用する手法です。
事業譲渡は、契約に従い資産や負債も選択が可能なので、売却側の既存事業及び資産を活用できる場合に選択されます。
合併の種類と仕組み
合併は、M&Aの中で最も企業同士を強く結びつける手法で、1体1の企業や複数の企業を最終的に1社残して合併させて存続する企業にします。
新設合併
新設合併は、合併の際に新たに企業を新設し、新設した会社に権利義務を継承させる手法になります。
合併前の全ての企業が消滅するので、合併前の株主に新設企業の株式を発行します。
新設した企業に、事業運用資産や雇用契約、事業ノウハウや取引顧客などが引き継がれるのでグループ内の組織再編などに利用されます。
吸収合併
吸収合併とは、一方のみの会社法人を残し、他の会社法人を消滅させて合併させることで、合併後に存続する法人に全ての権利義務を継承させる手法です。
吸収された会社は、解散して消滅するので吸収される会社が保有する資産の全てが存続される会社に移行されます。
一般的には、規模の小さい会社を大きな会社が吸収するケースが多く、新設合併より手続きが簡単なので合併する際には吸収合併を選択するケースが多いようです。
提携の種類と仕組み
広域の面でM&Aに含まれる提携の中には、資本参加と合弁会社設立があります。
資本参加
資本参加は、他企業との関係性を強固にするために、一方が他方の株式を取得して資本を提供する手法です。
資本参加は、敵対的な企業に対しておこなうことは少なく、主に友好的関係にある企業に対して更に連携を深めるために資本提供するのが一般的です。
資本参加は、低リスクで返済の必要がない資金を調達できるとともに、出資企業が拒否権を持たない範囲で株式を取得するために、出資を受ける企業の持ち味を保ったまま高いシナジー効果を期待できます。
合弁会社設立
合弁会社設立は、特定の目的のため複数の企業が共同で出資をおこない、新規で企業を立ち上げる手法です。
複数の企業により一つの会社が立ち上げられるので、それぞれが持っている経営資源を有効に活用して運営されるのが特徴です。
自社だけでは難しい業態へのチャレンジも、パートナーとなる企業のノウハウを活かしてシナジー効果を最大化させます。
M&Aにおける企業買収のメリット
企業買収をする際の主なメリットは以下のようになります。
- 企業買収によるシナジー効果が期待できる
- 経営の健全化により利益が明確化する
- 買収資金の準備が不要になる
- 経営資源を獲得できる
- 後継者問題の解消
- 新規事業参入リスクの軽減ができる
- 経営の多角化を実現可能
- 節税対策効果がある
企業買収によるシナジー効果が期待できる
企業買収によるシナジー効果とは、複数の企業がもつ技術や資源を集約化することで、企業単独で生み出す成果よりも大きな効果をもたらすことを指します。
企業買収により得られるシナジー効果には、「生産」「販売」「投資」「経営」の4つの効果が期待できます。
生産面でのシナジー効果
会社の規模が大きくなり、生産数量が増加するに伴い原材料の大量購入が可能になり、原材料を安価で調達できるようになります。
また、生産量が増加することで工場の稼働率を向上させることが可能なので、稼働益や人件費の面でも優位に働きます。
販売面でのシナジー効果
買収することで、各々の企業の販売ネットワークを利用して拡販が可能になるとともに、クロスセルや両企業のブランドを生かした販売展開が期待できます。
投資面でのシナジー効果
投資面では財務基盤の安定化や、新商品や新たな技術に費やす出費も最小限で最大化の効果を図る効果があります。
経営面でのシナジー効果
企業間で経営ノウハウの情報交換や、効率的な人材教育などの面でさまざまな意見交換などもなされます。
経営の健全化により利益が明確化する
M&Aにおいては、資金調達力の増強を図るためや資金調達のコストを削減することを目的として行われることがあります。
経営の健全化には多くの資金が必要になるので、母体の強化を図ります。
また、開発や生産を中心に行う企業が販売の企業を買収することで、開発から生産・販売まで一貫して行うことができるようになるので、業務委託などによる中間マージンなどの余計な出費が不要になるので利益をより明確化することができます。
買収資金の準備が不要になる
通常のM&Aでは多くの資金を事前に調達する必要がありますが、株式交付、株式交換、株式移転、会社分割などの手法を用いるケースでは、企業を買収する際に必要な買収対価に自社株式を利用するので、買収の際に多額の現金を事前に準備する必要がありません。
経営資源を獲得できる
前述でも解説しましたが、企業を買収することでその企業が保有する経営資源も獲得することができます。
一般的に経営資源とは、企業が開発した技術や育成した人材などを指します。
企業を買収することで、特許や商標といった知的財産や、開発者などの技術者を企業ごと手に入れることができます。
後継者問題の解消
特に中小企業などの場合は、後継者がいないと会社の存続が難しい状況に迫られます。
企業買収では、後継者がいなくても買収後には新たな経営者に事業継承され会社を存続させることができます。
経営者にとっては、従業員の未来を繋ぐことができるので大きなメリットになります。
新規事業参入リスクの軽減ができる
通常新たな業界に新規参入する際には、既存の企業より後発での販売展開になるので一定のリスクが伴います。
しかし、買収で新規事業を展開する際には、すでにその分野で事業を運営しており、ある程度の実績を挙げているのでゼロからの参入に比べてリスクを最小限にして事業を始めることができます。
経営の多角化を実現可能
企業買収のメリットは、経営の多角化を実現できる点でも有利に働きます。
企業が一つの事業に対してパワーバランスを集中させることは、企業にとって得意分野を伸ばす事になるので強みになり重要です。
一方その反面で、事業がうまくいかなくなった場合にはリスク回避の点で大きな損失にも繋がります。
買収を利用することで、一つの事業が好調な時ほど他の事業に着手してリスク分散を行い、トータルで安定した事業パフォーマンスを発揮できるような対策ができます。
節税対策効果がある
企業買収においては、節税対策にも効果がある場合があります。
主な税金対策としては「第三者割当増資」「役員退職金」「買取ニーズの高い資産を選定し売却」など主に3種の対策があります。
第三者割当増資
第三者割当増資では、会社が新しく株式を発行して、その株式を議決権割合が5割超となるように第三者割当で買収側に交付することで経営権を買収側に渡すことができます。
この際に買収側が支払う株式対価は出資金であり、売却側はキャッシュを得ることがなく対象会社の資金が増資により増加されるだけです。
そのため、売却側の株主に課税はなく、対象会社にも損益が発生しません。
役員退職金
売却側の株主(個人)が売却対象会社の株式を保有している場合で、尚且つ対象会社の役員を勤めている際には、株式譲渡の譲渡対価の一部を役員退職金で支払うことが可能です。
ある一定額までは、譲渡所得にかかる税率よりも退職金に対する所得税の税率の方が低いので節税対策となります。
(※)但し、同業他社の役員の退職金と比較しあまりに過大であれば認められないこともあります
買取ニーズの高い資産を選定し売却
企業買収において、企業全てを売却するのではなく事業譲渡を用いて買取ニーズの高い資産のみ売却することで、トータルの譲渡益を抑えることができるので税金も少なく抑えることができます。
また、株式譲渡の場合においても事前にニーズが低い事業や資産の整理を行い、株式の価値を下げて譲渡することで、譲渡所得を下げることができるので節税になります。
M&Aにおける企業買収のデメリット
企業買収をする際の主なデメリットは以下のようになります。
- 従業員や取引先の不安を煽る可能性がある
- 手法によっては複雑な手続きが必要である
- PMIによる負担が大きい
- 経営統合に失敗するリスクがある
- 簿外債務、偶発債務のリスクがある
- のれんの減損リスクがある
- 許認可を引き継げず事業継続できない場合もある
従業員や取引先の不安を煽る可能性がある
買収におけるデメリットの一つとして、従業員や取引先の不安を煽る可能性が挙げられます。
従業員としては、今までの雇用形態からの変更、買収による業績不安でのモチベーションダウンなどがあります。
取引先目線では、先々の取引に関する継続性や取引条件の改定などに伴う不信感などが挙げられます。
買収後も継続して良好関係を築くためには、企業の方針を明確にして従業員を安心させると共に、担当者が顧客にしっかりと説明責任を果たしケアする必要があります。
手法によっては複雑な手続きが必要である
企業買収の手法によっては、過半数の社員の同意が必要な場合、社員全員の合意が必要な場合などの事前確認が必要なケースや、デューデリジェンスの実施、財務計画の策定など専門的な知識が必要になります。
また買収や合併に関する契約そのものが複雑な法的手続きを要するので、M&Aに精通した専門家の知識が不可欠になります。
PMIによる負担が大きい
PMIとは、「Post Merger Integration」の略で日本語に置き換えると「買収後における経営統合プロセス」のことを指します。
買収する会社と買収される会社とでは、異なる組織文化が営まれてきました。
買収後に統合されることで、必ずといっていいほど摩擦や調和の難しさが露呈します。
また、社内システムの相違による連携不足なども発生することが懸念されるので、システムや業務プロセスの統合も行う必要があります。
企業買収後には、これらの対応に多くの時間を要することが考えられます。
経営統合に失敗するリスクがある
企業買収は、必ずしも成功するとは限りません。
将来的な企業価値を算出して買収しますが、思った以上のシナジーを見出すことができないことによる収益減なども考えられます。
また、経営統合に異を唱える人材は離職を希望することもあります。
特に技術系などのノウハウをもった人材の流出は、企業にとって大きな損失と言えるので買収後の戦略としては人材の流出も想定する必要があります。
簿外債務、偶発債務のリスクがある
簿外債務とは、貸借対照表の中に記載されていない債務で、偶発債務は現時点では債務ではないものの将来的に債務になる可能性があるものを指しますが、企業買収で会社全体を買収する際には簿外債務と偶発債務を引き継いでしまいます。
買収後に、買収前に起きた出来事が原因で訴訟になることもあるので、事前にデューデリジェンスに調査漏れがないか精査する必要があります。
のれんの減損リスクがある
のれんとは、企業買収における時価純資産のうち評価を上回る金額分のことを指します。
ブランドの評価や人材、顧客基盤など有形ではない資産などを時価純資産に上乗せして評価します。
買収後にのれんの価値が予想以上ではなく、想定よりもシナジー効果が見込めずのれん代を回収できない場合に損失となります。
許認可を引き継げず事業継続できない場合もある
売却側が得ている許認可は、合併や事業譲渡などの手法を利用した場合には基本的に買収された企業へ許認可が引き継がれます。
しかし、売却側の企業が法令違反を行って必要な許認可を得ずに事業展開していた場合には、買収側は新規に許認可を得る必要があります。
M&Aを利用して、許認可に時間がかかる業種の事業展開を取り進めようと考えていた場合には、許認可が引き継げないと大きなマイナスを発生させる可能性があるので、事前に許認可の有効性確認は徹底して行う必要があります。
M&Aを展開した際の成功事例
M&Aで成功した企業の事例をいくつかご紹介します。
楽天株式会社:シナジー効果による「楽天経済圏の確立」
現在では楽天経済圏という言葉も一般的になってきた「楽天株式会社」は、さまざまな業種の企業をM&Aし、多角的に事業を広めてきました。
買収してきた企業としては以下のような企業があります。
買収前の事業名 | 買収後の事業名 |
---|---|
旅行サイトのマイトリップ・ネット | 楽天トラベル |
あおぞらカード | 楽天カード |
DLJディレクトSFG証券 | 楽天証券 |
ビットワレット | 楽天Edy |
イーバンク銀行 | 楽天銀行 |
Fablic | 楽天ラクマ |
楽天株式会社は、生活基盤に特化したサービスを買収し、そのサービスを利用することでポイント還元を行うことで多くの顧客を取り込んでいます。
ソフトバンク株式会社:大型買収により通信キャリアとして急成長を遂げる
ソフトバンクに関しては、日本テレコム、ボーダフォン(日本法人)、ウィルコム、イーアクセス、スプリントなど実績のある大手通信企業をM&Aすることで、通信事業におけるノウハウや人材を確保し現在ではドコモ、AUと共に大手通信キャリアとしての地位を確立しています。
またZホールディングス、ZOZO、LINE、PayPayを子会社化しITサービスの面でも日本トップクラスの企業に進化を遂げています。
株式会社ビックカメラ:配送から設置までトータルカバーを行いサービス向上
ビックカメラは、簡易株式交換の手法を用いて家電の配送や納品及び産業廃棄物の収集を行うエスケーサービスを完全子会社化しています。
従来家電などの輸送や回収及び産廃などは、外部企業に委託して行っていましたが、配送から設置、回収までトータルカバーができるサービスの提供を行いサービスの向上による利用客増加を図りました。
パナソニックホールディングス株式会社:ノンコア事業を切り離し財務改善
パナソニックのコア事業は、電池関連商品の製造販売になります。
関連企業としてヘルスケア商品を取り扱うパナソニックヘルスケア株式会社や、自動車部品を製造するパナソニックオートモーティブシステムズ株式会社がありますが、企業方針としてコア事業以外を清算し成長領域に重点投資する方針に切り替えました。
そのために、パナソニックヘルスケア株式会社を米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツに株式譲渡、パナソニックオートモーティブシステムズをアポロ・グローバル・マネジメントのグループ会社に売却して、売却益で財務改善を図りました。
大正製薬:通信事業の強化と若年層の獲得
国内大手製薬会社の大正製薬は、機能性基礎化粧品の製造及び通信販売を手掛けるドクタープログラムを買収しました。
大正製薬はドラッグストア向けとは別に通信販売も展開していますが、ドクタープログラムがもつ若年層の顧客と通信事業の強化を目的にM&Aを成功させています。
M&Aを展開した際の失敗事例
M&Aで失敗した企業の事例をいくつかご紹介します。
株式会社LIXIL:買収先のデューデリジェンス不足で大きな損失計上
LIXILは従来トステム、INAX 、新日軽、東洋エクステリア、サンウエーブ工業が統合されて設立された持株会社です。
同社は海外進出やM&Aにも積極的で、イタリアの外壁製造大手企業であるペルマスティリーザや、ドイツの水栓器具メーカーであるグローエグループを買収しました。
買収後にペルマスティリーザの業績が大幅に低迷したことにより数百億の損失を出しました。
それに加え、LIXILがペルマスティリーザの経営実情を確認すると、熟練職人の大量退職による工期遅れや、原料高騰などにより追加にて300億円以上の追加損失が確認されました。
グローエグループに関しては、中国の子会社であるジヨウユウにて不正会計が露呈し総額600億円以上の損失が発覚しています。
このケースではM&Aにおいて大切なデューデリジェンスが稚拙であったことにより、被害が大きなものに膨れ上がったとみられています。
第一三共株式会社:買収後に主力工場の品質問題露見
第一三共は、インド医薬品大手メーカーのランバクシー・ラボラトリーズを約4,900億円で買収しました。
買収の合意がなされた翌年に主要工場の品質問題が発覚し、わずか1年後に約2,100億円の赤字を計上しました。
大きな赤字の要因としては、米食品医薬品局から米国への製品輸出禁止措置を受ける等のトラブルが重なったため負債が大きく膨れ上がったとみられます。
パナソニックホールディングス株式会社:リチウム電池事業の未来予測を見誤る
成功例でご紹介したパナソニックも失敗した例があります。
2000年代に日本国内の家電メーカー大手の一角を占めていた三洋電気ですが、投資が大きい半導体事業も思うように伸び悩み経営危機が表面化していました。
株価下落に伴い買収費用が低下したこともあり、パナソニックが買収を行い最終的に完全子会社にしました。
家電事業とのシナジーを期待しての買収でしたが、三洋電気のリチウム電池事業の収益悪化が要因にもなり最終的には7,000億以上にもなる赤字決算を計上しました。
キリンホールディングス株式会社:ブラジルを皮切りにした海外事業展開失敗
国内大手の飲料メーカーであるキリンホールディングスは、海外展開に着手するための足がかりとして、ブラジルの飲料メーカーであるスキンカリオール社の株式を50.45%取得し、スキンカリオール社を子会社化しました。
不運なことに買収後にブラジル国内の景気が急激に低迷したとともに、同業他社との競争が激化したために1,000億円以上の損失を計上しました。
それでも世界の市場に進出するものの、赤字が続き2017年にハイネケンに約770億円で売却して海外事業を撤退しています。
株式会社東芝:米原発大手買収も安全性問われ失敗
東芝は2006年に、将来的な電力不足への備えとしてアメリカで原子力発電設備や燃料関連事業を展開しているウェスティングハウスを6,000億円以上の金額で買収しました。
買収することで原子力事業の強化を図る試みだったところ、2011年に起きた東日本大震災で原子力発電所の事故が発生したことにより、原子力発電の安全性が問題視され経営が悪化し、2017年に同社は経営破綻しました。
結果として東芝は過去最大の9,656億円の赤字決算となりました。
まとめ
企業買収とM&Aの違いや、企業買収の手法や仕組みなどについて解説しました。
M&Aは、二つ以上の会社が一つの会社になることや、買収され子会社になるようなことを指すので、企業買収もM&Aの中に含まれています。
手法によっては新たに資金調達をしなくてもよい手法や、使い方によっては節税対策にもなります。
M&Aを行うことで必ず成功すると確約されている訳ではないので、事前にデューデリジェンスの実施を確実に行う必要があります。
過去に行われたM&Aの成功例と失敗例を参考にして、同じ過ちは踏まないようにする必要があります。
M&Aの実施を検討する際には、高度な知識と経験が要求されるので、不安を感じられている場合には専門のコンサルティング会社に相談すると安心です。
特に企業価値を高めシナジー効果を十分に発揮出来たM&Aへ導いた実績を多く持つM&Aに強いコンサルティング会社へのご相談をお勧めいたします。