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企業価値とは?計算方法や重要性、最短で価値を高める方法について

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企業価値とは?計算方法や重要性、最短で価値を高める方法について

企業価値とは、企業の価値を金額で評価した言葉であるという認識はあっても、実際にどのように価値が決まるのかなど分からない方も多くいるでしょう。

ここでは、企業価値の定義や役割、そして具体的な計算方法や企業価値を高める方法などを解説します。

企業価値とは

企業価値とは、現時点の社会における企業が持つ企業全体の経済的価値を数値化して表したものを指します。

企業価値は、最終的に金額で企業を評価するので、投資やM&Aを行う際に重要な情報として取り扱われます。

一概に企業価値といっても、株主目線と従業員目線、M&A時に於ける買主目線ではそれぞれ異なる企業価値があります。

株主目線での企業価値

株主目線での企業価値とは、主に以下の3つの条件が揃うと、価値が高いと言えます。

  • 業績を伸ばし続けて株価を上げる
  • 企業として常に利潤を追求する姿勢である
  • 安定した資金調達で強い経営基盤がある

株主としては、高い利益を出し続けて大きな還元が見込める企業がより価値が高いと考えます。

従業員目線での企業価値

一方で、従業員目線での企業価値とは、時価総額が上がるにつれて従業員に還元されることや、仕事とプライベートがバランスよく維持できるホワイトな企業体質が、価値が高いとされます。

給与が高いだけではなく、未来に向けて誇りをもって働く環境が整っているかという点が従業員にとっての企業価値です。

M&A時に於ける買主目線での企業価値

M&A時に於ける買主目線に於いて重要な項目としては、

  • シナジー効果がどれだけ得られるか?
  • 購入企業と同じ市場規模にするための時間 > 購入価格
  • 優秀な人材の確保
  • 唯一無二の強みがあるか?(自社では真似できない独自のサービスや強み)

M&A時に於ける企業価値はこれらを複合的に判断するため会社のBS/PLの数字だけでは表せない企業価値が眠っている事も多くあります。

企業としてのブランド評価に繋がる企業価値の定義

企業としてのブランド評価に繋がる企業価値の定義

企業価値には、前述のように株主や雇用されている従業員目線で異なる企業価値が見出されています。

企業価値を数値化する為には、実際にどのような価値を確認して評価するのでしょうか?

一般的には以下のように定義されます。

企業価値は事業価値に非事業資産を加えたもの

一般的に企業価値とは、事業価値に非事業価値を加えたものと定義されます。

事業価値とは、現在展開している事業が市場でどの程度の価値を生み出すのかをキャッシュフローで明確化したものであり、事業そのものの価値を指します。

企業の収益性などと同義で使用され、保有している資産や負債、従業員の価値、商標権、企業のブランドなどが含まれます。

一方で、非事業資産とは有価証券・保険積立金・貸付金・遊休不動産などを指しますが、事業価値に非事業資産を加えたものが企業価値と定義されます。

これにより、企業価値は「事業価値+非事業価値」と言えます。

価値の帰属先はどこになる?

上記のように、企業価値は目にみえる「株主目線での価値」と評価しにくい「従業員目線での価値」「M&A時の買主目線での価値」があります。

しかし、投資やM&Aで企業価値という文言が提示された際には、実際に誰に帰属する価値なのかを明確にする必要があります。

誰に帰属する価値なのかを明確にした場合に、企業価値は株主に帰属する「株主価値」と債権者に帰属する「負債価値」の2種類で構成されていると言えます。

株主に帰属する価値

株主に帰属する価値を「株主価値」と呼び、企業価値から社債や借入金などの有利子負債を差し引いた部分が株主価値となります。

一般的にM&Aなどの企業買収で株式譲渡をする際には、株主価値を譲渡価格の基礎とするのが一般的となっています。

債権者に帰属する価値

債権者に帰属する価値を「債権価値」と呼び、企業が抱える借入金・社債など有利子負債が負債価値となります。

企業側としては負債となりますが、金融機関などの債権者目線では資産になります。

株主価値は「企業価値-負債価値」で計算されるので、負債価値が多いほど企業の価値は下がっていきます。

企業価値は大きく分けて2つの役割がある

企業価値は大きく分けて2つの役割がある

企業価値とは、前述で企業が持つ企業全体の経済的価値であると解説をしましたが、企業価値の役割は企業が自社を成長させる上でも重要な役割を果たします。

M&Aの基準となる価格の評価を決める

M&Aを行う際には、企業を買収する為の基準を設ける必要があります。

売り手と買い手の間にて交渉が発生するので、企業の価値を判断できる材料がないと交渉が円滑に進みません。

また、買い手側の企業は当然安く買いたいと考えるので安い単価を提示します。

その際に、売り手側が自社の適正な評価価格が分からないと安く買い叩かれることになります。

特に非上場企業などは、株価や市場での相場が分かりにくい傾向にあるので、M&Aなどを控えている際には専門のコンサルタントの協力を得て自社の決算書の数字だけでは見えない企業価値も加えた評価を確認した上で交渉に臨むと良いでしょう。

経営戦略策定や投資の判断面でも重要となる

企業では、新たな事業や現在取り組んでいる事業計画の策定に際して、経営戦略の観点で企業価値評価を実施して現状を確認します。

自社の市場価値がどの程度の水準にあるかを確認することで、どの方向に舵取りをしたら良いかなど方向性や課題の確認ができます。

投資の面では、金融機関や投資家は実際に融資や投資を行う前に、対象となる企業の評価を確認します。

企業価値を確認した上で、将来性のある企業により資金を投入するかどうかを判断します。

現状経営が下り坂の企業や、伸び代が天井についた企業よりも今後の将来性がある企業を選ぶのは当然の選択となります。

企業価値は3種のアプローチから計算できる

企業価値は3種のアプローチから計算できる

企業の価値は相対的な情報を元に計算されるので、直近で起こった外部的事案や個別の事情のみで計算することはできません。

また、状況に応じてさまざまな試算方法があるのが特徴ですが、ここでは一般的な「コストアプローチ」「インカムアプローチ」「マーケットアプローチ」の3種類の計算方法を解説します。

コストアプローチ

コストアプローチは、貸借対照表上にある企業の純資産の時価評価額を基準として計算する方法です。

純資産は、資産から負債を引いたものになるので、純粋な意味で企業の資産を元に計算されます。

しかし、貸借対照表が作成された時点での評価しかできないので将来的な価値などの増減要素を考慮することができません。

そのため、利用できるシチュエーションとしては、企業の清算などと限定的な利用になります。

コストアプローチを用いた計算も複数の方法がありますが、代表的な手法として以下の2点の手法があります。

簿価純資産法

簿価純資産法は、貸借対照表の資産から負債を引いて求めます。

含み益や含み損が発生している場合には、時価と簿価に乖離が発生する特性がありますが、貸借対照表の数字のみで計算されるので誰が計算しても同じ数値を導き出せます。

企業価値=貸借対照表の資産 – 負債

時価純資産法

時価純資産法は、時価評価をした資産から負債の金額を差し引いて求めます。

簿価純資産法と異なり、時価評価を求めるので簿価純資産法の欠点を排除した方法となります。

しかし、企業が保有する全ての資産の適切な時価評価は難しいので、簿価純資産法よりは精度が高い評価の計算ができますが、将来的な企業価値を反映できない点は変わりありません。

企業価値=企業が保有する資産の時価総額 – 負債の時価総額

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、企業が将来的に作り出す企業価値による収益予想に基づくキャッシュフローをベースとして、現在の価値に換算して計算する方法です。

企業の存続を前提として、将来性やシナジーを考慮して数値に反映させます。

未上場企業や過去の実績が少ない企業でも、将来性が見込まれる場合には評価が高くなります。

インカムアプローチの代表的な手法としては、「収益還元法」「配当還元法」「ディスカウンテッドキャッシュフロー法(以下DCF法と略)」などがあります。

収益還元法

収益還元方式は、主に対象となる企業が将来的に生み出す収益の価値を、現在の価値に置き換え換算して計算する方式です。

1年間の利益から還元利回りを割ることで求めることができます。

企業価値 =1年間の収益 ÷ 還元利回り

配当還元法

配当還元法は、非上場企業の株価を評価する方法のひとつです。

非上場企業の株式は価格が定められていないので、同族会社や同族株主がいる会社などの少数株主が保有する株価を評価する際に用いる計算方式です。

配当還元法では、過去2年間の配当金額平均額を、利率が10%と仮定して計算します。

非上場企業の価値(評価額)=(1株当たりの年間配当金 ÷ 10%)×(1株当たりの資本金額 ÷ 50円)

ここでいう1株当たりの年間配当金の求め方は、「(直前の期とそのひとつ前期の配当金総額の合計 ÷ 2)÷(直前期の資本金 ÷ 50円)」で算出することが可能です。

DCF法

DCF法は、事業計画書などから企業が将来的にどれくらいのフリーキャッシュフロー(以下FCFと略)を得ることができるのかを計算し、将来に生じるリスクを「割引率」として考慮し企業価値を計算する手法です。

DCF法の算出には複数の計算が必要なので、より精度の高い企業価値が求められるとして最もポピュラーな計算方法の一つです。

DCF法の算出方法は以下の流れで行います。

①FCFを予測

FCFとは、企業が事業や投資によって生み出した利益で、自由に使用できる現金のことを指します。

キャッシュフローの計算式は、以下のようになります。

FCF=営業利益 × (1-税率)+ 減価償却費 – 設備投資額±運転資本増減額

②割引率を算定

キャッシュフローは、時間の経過とともに変化するものなので、現在の価値に合うように割引率を算定する必要があります。

DCF法においての割引率は、一般的に加重平均資本コストを用いて計算します。

加重平均資本コスト=株主資本 ÷(株主資本+有利子負債)× 株主資本コスト + 有利子負債 ÷(株主資本+有利子負債)×有利子負債コスト ×(1-税率)

③ターミナルバリュー(以下TVと略)の設定

ターミナルバリューとは、事業計画の最終年度以降のキャッシュフローを事業価値に取り込む方法のことを指します。

TV=事業計画の最終年度のFCF ×(1+成長率)÷(割引率-成長率)

④事業価値を求める

事業価値とは、会社の事業そのものの価値を指し、事業がどれだけ会社の利益を生み出せるかを示す数字です。

算出したFCFやTVを、加重平均資本コストで割り引くことで事業価値を求めることができます。

⑤非事業用資産を評価する

事業に用いること加算したものを非事業用資産と言いますが、非事業用資産を事業価値に加算したものが企業価値となります。

非事業用資産には、有価証券、遊休資産、有形無形固定資産などのようなものがあります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、対象となる企業と同様の市場での他社との取引価格を比較して算定する方法です。

代表的な算定方法は「類似業種比準法」「市場株価法」などがあります。

類似業種比準法

類似業種比準法では、過去に取引された類似規模のM&A事例の数値を抽出して算出します。

企業価値 =類似業種の平均株価 ×{(配当額比 + 利益比 + 純資産比)÷3 } × 係数

市場株価法

市場株価法は上場企業の場合のみ使用し、直近数ヶ月間の平均株価を求めて評価額を算出します。

企業価値 =(終値×出来高株数)÷ 出来高(取引株数)

最短で企業価値を上げる方法

最短で企業価値を上げる方法

企業価値の定義や計算方法を確認してきましたが、実際にどのようにすれば企業価値を上げる事ができるのでしょうか。

収益力の改善

企業価値を上げる際に、最も簡単な方法は収益力を上げる事です。

過去の事業の結果を検証して、未来への経営戦略を立てて営業方針を改善する必要があります。

投資効率を最適化する

営業面の強化とともに、投資効率の最適化を図ることも必要です。

必要のない資産や遊休資産の見直しなども必要になります。

財務状況を見直す

企業の価値は、前述のように株式価値に負債価値を差し引きしたものになるので、負債を清算して減らすことで企業価値は高まります。

エンゲージメントを高める

ここでのエンゲージメントとは、企業と従業員との強いつながりのことを指します。

エンゲージメントが高い企業は、企業としての理念を従業員が理解した上で職務を遂行するので、貢献意欲や信頼度が高い状態となります。

このような人材が豊富な環境で働く従業員は優秀で流出しにくく、収益性や生産性が高くなります。

隠れた価値を表面化させる

一般的には余り価値が付かないと思われる企業に於いても、特定の買主には宝の山と言う事が多く存在します。この隠れた価値に気づきシナジー効果を具体的に示す事で企業価値が格段に高まる事も御座います。

まとめ

企業価値とは、前述のように企業が持つ企業全体の経済的価値を数値化して表したものでした。

M&Aにおいては、企業を売る側も買う側も企業価値の確認は必ず必要になります。

企業価値の計算方法は、状況によりさまざまなケースがあるので、最適な方法を利用して確認すると良いでしょう。

また、企業価値を上げるには長期間の取り組みが必要になります。

どのような手法で取り組むべきなのか迷っている場合には、専門のコンサルタントに相談してみましょう。

この記事の監修者

株式会社CxOgroup代表取締役・CEO水野雄貴

株式会社CxOgroup 代表取締役・CEO 水野 雄貴

・2005年株式会社商工組合中央金庫 入庫。
・東京・大阪・名古屋を拠点として全業種延べ500社以上に対する中小企業融資を実施。
・2016年に株式会社ModernStandard取締役CFOに就任、
・2019年同社を株式GAtechnologies(東証マザーズ:3491)に15億円にて株式譲渡。
・その後CFO×COO代行として携わった企業3社が2~3年以内に、各々企業価値を上げて2桁億円にてバイアウトを達成。
・累計100億規模のM&A企業に対するコンサルを実施。
・2022年株式会社CxOgroup設立、代表取締役CEOに就任。
・現在複数社のCFO×COO代行を兼任