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企業価値・株式価値・事業価値の違いとは?それぞれの計算方法や高める方法について

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企業価値・株式価値・事業価値の違いとは?それぞれの計算方法や高める方法について

企業価値とは、会社全体の価値であるという点はなんとなく理解できますが、株式価値や事業価値とどう違うのか問われると明確に答えるのは難しいものです。

また、それぞれの価値は計算することができるので、経営者として自社の価値を確認しておきたいものです。

ここでは、企業価値、株式価値、事業価値の違いや、それぞれの計算方法や企業価値を高める方法について解説します。

企業価値とは?

企業価値とは、財務の観点から現時点での企業全体の経済的価値のことを指します。

企業の財産や事業、株式、負債状況などを考慮して決定されるので、投資家や株主をはじめとして会社を取り巻く環境にとってどれだけ魅力があるのかを数値で表したものになります。

企業価値は、一般的要因、業界要因、企業要因、株主要因、目的要因の5つの要因により決まるとされるので、上場企業は株式時価総額が明確に算出できますが、非上場企業に於いては会社ごとに個々の事情を考慮したものになり算出する方法により異なる結果となります。

株式価値や事業価値との違い

株式価値や事業価値との違い

企業価値は、株式価値や事業価値も同様の意味に混合されますが、実際にはそれぞれ別の意味があります。

株式価値とは

株式価値とは、株主に帰属する価値のことで、上場企業であれば株価の時価総額のことを指します。

非上場企業の場合には、株価が公開されていないので売り手と買い手の間で株価を算定して価値を図ります。

事業価値とは

事業価値とは、事業が将来的にキャッシュを生み出す力に営業権や商標権、特許権などを含んだ価値を指します。

ここには、事業に含まれない現金預金や投資用有価証券、遊休資産などの非事業用資産は含まれません。

企業価値と株式価値、事業価値の関係

前述の通り、株式価値や事業価値はどちらも企業価値の一部となります。

企業価値・株式価値・事業価値それぞれの計算方法

企業価値・株式価値・事業価値それぞれの計算方法

価値の算出はその時の企業の状態や、未来のキャッシュフロー(CF)などを考慮して計算するので、様々な計算方法を利用して算定する必要があります。

それぞれの計算方法は以下のようになります。

企業価値の計算方法

企業価値に於いて非上場企業の価値を求めるのは複雑で、一般的な計算方法として大きく分けると「コストアプローチ」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つに分類して求めることができます。

コストアプローチ

コストアプローチでは、対象企業の資産と負債額をベースに企業価値を算定します。

よく利用される計算方法として「時価純資産法」があり、譲渡企業の資産や負債を加味して時価評価を行い、時価総額より負債合計を引いた額で求めます。

計算式としては以下の通りです。

株式価値 = 企業の保有資産の時価総額 − 負債を加味した時価総額

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、対象企業の類似企業で上場している企業を比較対象にして企業価値を算定します。

利用される計算方法としては、「市場株価法」や「類似会社比較法」などがあります。

市場株価法

市場株価法では、類似している企業の株価を1ヶ月〜6ヶ月程度参照して、指標に算定します。

計算式は以下の通りです。

企業価値 =(終値×出来高株数)/ 取引株数の出来高

類似会社比較法

類似会社比較法は、主に非上場企業の企業価値を算定する際に用いられます。

類似する企業のEBITDAなどの財務指標を用いて比較判断材料として算定します。

計算式は以下の通りです。

企業価値 = 当期純利益 × PER(株価÷1株当たりの利益)+ 有利子負債

インカムアプローチ

インカムアプローチは、企業の将来性を考慮して企業価値を算定します。

主な計算方法としては、「DCF法」があります。

DCF法

DCF法では、企業の将来的な利益を現在の価値に換算して、企業の価値を算定します。

計算方法は以下の4つの工程を経て企業価値を算定します。

①フリーキャッシュフロー(FCF)の計算

DCF法で企業価値を算定する際には、まずFCFの計算をする必要があります。

FCFとは、利益など差し引いて企業が自由に使用できるお金のことを指し、CFCから株主配当や借金の返済などを行います。

FCFの計算式は、以下の通りです。

FCF = 営業利益 ×(1-税率)+ 減価償却費 - 設備投資額 ± 運転資本増減額

②割引率の計算

DCF法では、時間と共に価値が変動する考えなのでCFを現在の価値に置き換えるための割引率を算定する必要があります。

DCF法における割引率は、一般的に加重平均資本コストを用います。

加重平均コストとは、資金調達の際に借入による資金コストと増資による資金コストを加重平均したものを指します。

計算式は以下の通りです。

加重平均資本コスト = 負債総額 /(負債総額 + 株式の時価総額)×(1-実効税率)× 負債コスト + 時価総額 /(時価総額+有利子負債)× 株主資本コスト

③ターミナルバリュー(TV)の設定

ターミナルバリューとは、事業計画の最終年度以降に永続的に生じるFCFを現在の価値に換算した総額のことを指します。

計算式は以下の通りです。

TV = 予想期間最終年度の次の年度のFCF /(割引率-永久成長率)

④現在価値に割り引いて企業価値を算出

前述にて算定した事業計画期間内のFCFとTVを現在の価値に割り引いて合計することで事業価値を算定することができます。

事業価値に、事業外の資産を加算すると企業価値を算出することができます。

株式価値の計算方法

株式価値は、株主に帰属する価値のことで、計算方法としては「DCF法」「株価倍率法」「修正純資産法」などがあります。

「DCF法」は前述と同じ計算となるので、ここでは「株価倍率法」「修正純資産法」を解説します。

株価倍率法

株価倍率法では、類似の上場企業を選定した後に、株価倍率を特定の企業の財務書数値に掛けることで算定することができます。

株価倍率とそれぞれに対する計算式は以下のようになります。

株価倍率の求め方
株価倍率の種類計算方法適用企業
PER(株価収益率)株式時価総額 / 当期純利益・利益がある企業
・利益があるスタートアップ企業
・利益があるベンチャー企業
PBR(株価純資産倍率)株式時価総額 / 純資産額・特別損失額が大きい企業
・利益のない企業
PSR(株価売上倍率)株式時価総額 / 売上高・スタートアップ企業
・ベンチャー企業
PCFR(株価キャッシュフロー倍率)株式時価総額  /キャッシュフロー・利益がある企業
・減価償却の検討が必要な企業
PEGレシオ(企業の中期的利益成長率を加味し株価の水準を測る指標)PER / 1株あたりの利益成長率・スタートアップ企業
・ベンチャー企業
株価倍率を利用した株式価値の計算方法
株価倍率の種類株式価値の計算方法
PERPER × 当期純利益
PBRPBR × 純資産額
PSRPSR × 売上高
PCFRPCFR × キャッシュフロー
PEGレシオPEGレシオ × 1株あたりの成長率 × 当期純利益

修正純資産法

修正純資産法では、資産や負債の中で主要な項目について時価評価替えを行い、その数値に基づき株式価値を算出する方法です。

ここで評価する項目は、全ての資産や負債を評価するのではなく、主要なものだけを時価に評価替えします。

計算方法は以下の通りです。

株式価値 = 時価評価資産 − 時価評価負債

事業価値の計算方法

事業価値の計算方法は、「DCF法」「類似会社比較法」「時価純資産法」の3種類があります。

ここでは、上記で解説していない「時価純資産法」についてご紹介します。

時価純資産法

時価純資産法とは、企業が保有する資産の時価総額と、負債時価総額から企業価値を算定する手法です。

修正純資産法では、主要な物だけを時価に評価替えしますが、時価純資産法では全てを時価替えします。

計算方法は以下の通りです。

企業価値 = 企業が保有する資産の時価総額 − 負債の時価総額

企業価値を高める方法

企業価値を高める方法

企業価値を高めると、M&Aや投資の面などで有利に働きますが、実際にどのような取り組みを行うことで企業価値を高めることができるのでしょうか。

ここでは、企業価値を高める取り組みを解説していきます。

投資効率を向上させる

投資効率を向上させるためには、流動資産や固定資産の見直しが効果的です。

不要な在庫や仕入れ管理をおこなうことで、流動資産を適正化することができます。

また、不動産や投資有価証券などの固定資産がキャッシュフローを生んでいるか確認し、利益を得ていないものは売却して新たな投資に回すと良いでしょう。

投資効率を向上させて財務の適正化を図ることで、企業価値を高めることができます。

事業の収益性向上

企業価値を高めるには、事業の収益性向上が必須条件です。

事業計画通り進捗できているのか、解像度の高い事業計画であるのかなど定期的な見直しが必要です。

また、売上高の向上を図りながら必要のない経費の削減などを積極的に行い、目にみえる収益の向上を図ることで企業価値を高めることができます。

財務の改善

財務状況の改善を行う際には、「財務レバレッジ効果」や「負債の節税効果」を利用すると企業価値の向上に繋げることができます。

財務レバレッジ効果

総資産利益率が負債利子率を上回っている場合に、負債の利用が自己資本純利益率を上昇させるという効果を発生させます。

これを財務レバレッジ効果と呼びますが、これにより銀行融資を受けていたほうが融資を受けない場合より企業利益率が高くなるケースがあります。

負債の節税効果

有利子負債の支払利息は、税法上損金算入することができます。

課税の対象である所得を抑える効果があり、節税効果を生むことになります。

これによりキャッシュフローが増えるので企業価値を高めることに繋がります。

まとめ

企業価値、株式価値、事業価値の違いや、それぞれの計算方法の他に、企業価値を高める方法などについて一般的な概念について解説しました。

企業価値の中に株式価値や事業価値が含まれ、それぞれ異なる意味を表します。

企業買収やM&Aの面では、企業価値を高めることが重要とされ、評価の結果次第でM&Aなどの結果を大きく左右させます。

また、会社を経営する上で、企業価値の把握は重要な項目になるので、前述のような計算方法を把握して定期的に企業価値を確認しておく必要があります。

企業価値を正しく計算するには、複数の計算を行い、多角的に判断する必要があります。

複雑な計算方法を多用するので、ご自身で算定するのが不安な方や、今後のために企業価値を高めたいと考えている方は専門の企業コンサルタントに相談すると安心です。

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この記事の監修者

株式会社CxOgroup代表取締役・CEO水野雄貴

株式会社CxOgroup 代表取締役・CEO 水野 雄貴

・2005年株式会社商工組合中央金庫 入庫。
・東京・大阪・名古屋を拠点として全業種延べ500社以上に対する中小企業融資を実施。
・2016年に株式会社ModernStandard取締役CFOに就任、
・2019年同社を株式GAtechnologies(東証マザーズ:3491)に15億円にて株式譲渡。
・その後CFO×COO代行として携わった企業3社が2~3年以内に、各々企業価値を上げて2桁億円にてバイアウトを達成。
・累計100億規模のM&A企業に対するコンサルを実施。
・2022年株式会社CxOgroup設立、代表取締役CEOに就任。
・現在複数社のCFO×COO代行を兼任