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ROE(自己資本利益率)の目安とは?業種別の基準や計算方法について

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ROE(自己資本利益率)の目安とは?業種別の基準や計算方法について

会社の運営を行う上で、経営の効率化は必要な項目です。

また、投資家目線でも企業の効率性や収益力は必須確認事項になります。

経営の効率化を確認するには、ROE(自己資本利益率)などの指標がありますがどのような数値なのか改めて問われると分かりにくいものです。

ここでは、ROEの数値から導き出せる情報や、目安、業種別基準やROEの計算方法について解説します。

※本記事はコロナ禍以前のデータを指標に記載しています。

ROE(自己資本利益率)とは何の指標?

ROEとは、「Return On Equity」の略で、自己資本を利用してどれだけ効率の良い利益が得られているかを表し、株主資本利益率とも呼ばれます。

自己資本のベースとなる資金は、資本金及び利益剰余金などの企業が調達した返済義務のない資金となりますが、この自己資本を利用して得られた利益の指標になります。

一般的にROEの数値が高いほど、株主から預かった資金を効率的に活用できているということになります。

そのため、ROEの通知は投資家が投資先の選定を行う際に着目される指標の一つでもあります。

ROE(自己資本利益率)から導き出せるもの

ROE(自己資本利益率)から導き出せるもの

ROEの数値を導き出すことで、どのようなことが確認できるのでしょうか?

具体的には以下の3点が数値により導き出すことができます。

企業の成長速度が確認できる

ROEを計算することで、企業が成長する速度を確認することができます。

ROEの数値が高い企業は、資金を効率的に利用して順調に業績を上げていることを意味します。

数値の上昇率が高いと企業の成長スピードが加速しており、逆に下降していると業績が悪化して停滞していることになります。

当然の事ながら数値が高い企業の当基準利金は増加するので、投資家目線でも投資の価値がある企業とみなされます。

一方で、ROEの数値が低いと利益成長率が自己資本増加率よりも低くなり、企業として成長が鈍化しているとみなされます。

売上高当期純利益率が分かる

ROEを計算する上で、売上高当期純利益率の確認も必要になります。

売上高当期純利益率は、企業の全体売上高のうち何%が最終的に利益として残ったのかを示す数値を指しますが、この数値が高いほど効率的な運営を行えている証となります。

企業の経営効率の確認を行う際には、複数の数値を確認するとより明確な判断が可能なので、さまざまな指数を比較して分析すると良いでしょう。

未来の株価推移を予測するのに利用できる

ROEの数値を分析することで、株価の推移を把握することができます。

ROEは、前述の通り自己資本を効率よく利用して利益を算出している数値です。

そのため、ROEが高い企業はそれだけ効率的な運営を行えていることに繋がるので、投資家目線でも評価が高く株価は上昇する傾向にあります。

数値が低いと、経営効率が悪いと考えられるので新たな資金調達は困難になり、株価は低迷する可能性が増加します。

ROEだけでは判断できませんが、継続的に数値が上昇している場合は株価が上昇する可能性があると考えられます。

ROE(自己資本利益率)の目安とは?

ROE(自己資本利益率)の目安とは?

ROEは、前述より企業価値を図るための指標のひとつであることを見てきました。

数値が高いほど良いということは理解できますが、具体的にどのくらいの数値が良いとされるのでしょうか。

ROE8%〜20%が優良企業の基準

一般的にREOは、8%〜10%以上を超えるのが理想とされます。

2019年に経済産業省が発表した「事務局説明資料」によると、2018年の上場企業の平均ROEは9.4%となっているのでこの数値がひとつの指標となりそうです。

そして20%を超えると優良企業とみなされ、投資の価値があるとして高い評価となります。

「事務局説明資料」によると、2018年の米国のROEは18.4%、欧州では11.9%と日本に比べてプラス傾向にあります。

これは、日本の法人税が高くROEが低くなりやすいことも要因ですが、日本に比べて外国企業は、株主に対して還元意識が強いのも理由のひとつに挙げられます。

ROE(自己資本利益率)の業種別基準

前述のように、2018年の上場企業の平均ROEは9.4%ですが、未上場の企業など全て含めると全体的な平均値は8.6%となります。

経済産業省「2019年企業活動基本調査速報(2018年度実績)」の資料では、業種別のROEの平均値は以下のような数値になります。

項目ROE
2017年(%)2018年(%)
合計9.48.6
鉱業、採石業、砂利採取業1.43.5
製造業9.38.4
食料品製造業7.97.2
飲料・たばこ・飼料製造業12.211.7
繊維工業7.55.9
木材・木製品製造業(家具を除く)10.16.1
家具・装備品製造業6.56.3
パルプ・紙・紙加工品製造業3.80.2
印刷・同関連業4.01.8
化学工業10.67.5
石油製品・石炭製品製造業16.67.0
プラスチック製品製造業8.17.4
ゴム製品製造業10.09.5
なめし革・同製品・毛皮製造業9.27.2
窯業・土石製品製造業6.77.1
鉄鋼業6.75.7
非鉄金属製造業6.26.8
金属製品製造業6.47.4
はん用機械器具製造業7.98.4
生産用機械器具製造業12.312.1
業務用機械器具製造業8.38.3
電子部品・デバイス・電子回路製造業6.85.8
電気機械器具製造業13.810.9
情報通信機械器具製造業6.87.7
輸送用機械器具製造業10.710.4
その他の製造業6.79.7
電気・ガス業7.85.9
電気業8.16.2
ガス業6.64.8
情報通信業11.110.2
ソフトウェア業13.210.7
情報処理・提供サービス業11.013.7
インターネット附随サービス業13.611.9
 映画・ビデオ制作業10.56.4
新聞業2.92.5
出版業2.33.3
卸売業11.210.7
繊維品卸売業4.24.9
衣服・身の回り品卸売業6.94.8
農畜産物・水産物卸売業7.47.4
食料・飲料卸売業7.76.9
建築材料卸売業7.58.4
化学製品卸売業11.812.0
石油・鉱物卸売業14.210.5
鉄鋼製品卸売業11.112.6
非鉄金属卸売業12.110.1
再生資源卸売業9.19.1
産業機械器具卸売業15.22.5
自動車卸売業10.59.6
電気機械器具卸売業11.714.1
その他の機械器具卸売業11.111.4
家具・建具・じゅう器等卸売業5.85.2
医薬品・化粧品等卸売業10.714.0
紙、紙製品卸売業5.55.9
その他の卸売業12.715.4
小売業6.97.3
織物・衣服・身の回り品小売業5.66.9
飲食料品小売業5.36.0
自動車・自転車小売業7.47.0
機械器具小売業7.26.7
家具・建具・じゅう器小売業12.113.4
医薬品・化粧品小売業14.913.0
燃料小売業7.78.0
その他の小売業6.87.5
無店舗小売業6.87.5
クレジットカード業、割賦金融業7.52.6
物品賃貸業7.48.7
学術研究、専門・技術サービス業9.94.8
飲食サービス業7.48.5
生活関連サービス業、娯楽業9.07.4
個人教授所10.08.2
サービス業13.314.3

このデータから見てとれることは、日本の中核とも言える製造業のROE水準が8%未満の業種が多く、その反面で生産性が低いインターネット事業や情報通信、サービス業の水準が高い傾向にあることです。

日本経済を支えている基盤は、当然ながら製造業中心となりますが、投資の面では相反する形となります。

ROE(自己資本利益率)の計算方

ROE(自己資本利益率)の計算方

ROEは、前述のように自己資本を利用して効率のよい利益が得られているかを示す数値ですが、以下の3種類の計算式で算出します。

①「ROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」

②「ROE(%)=売上高純利益率 × 総資本回転率 × 財務レバレッジ」

③「ROE(%)=1株当たり利益 ÷ 1株当たり純資産 × 100」

ROEの計算式

ROEの計算式としては、①〜③の方法により算出できますが、より一般的な①の計算方法に関して詳細を解説します。

「ROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」

当期純利益とは、一会計期間(通常は1年間を基準にする)に会社が活動して得た全収益から、全ての費用・法人税等を差し引いた利益のことを指しますが、この数値に自己資本を割ることで算出することができます。

当期純利益の計算方法

当期純利益の計算方法は以下のようになります。

当期純利益=税引前当期純利益–税金(法人税、住民税、事業税他)± 法人税等調整額

自己資本の計算方法

自己資本は、一般的に貸借対照表の「純資産の部」の株主資本として記載されているもので、以下のようなものが挙げられます。

  • 企業の利益の蓄積として、自己株式、利益準備金、その他資本剰余など
  • 株主が出資した金額として、資本金、資本剰余金など
  • その他の包括利益累計額、新株予約権、被支配株主持分など

これにより、自己資本は次の計算式で求めます。

自己資本

=株主資本+その他の包括利益累計額

=純資産–新株予約権–被支配株主持分

ROEの計算式の一例

ROEの数値を求める為には、前述の計算式に当期純利益と自己資本の数値を算出することで求めることができます。

例えば、当期純利益が20億円あり、自己資本が100億円の企業のROEを算出する場合の計算式は「20億円÷100億円×100」となり、ROEは20%となります。

ROE(自己資本利益率)における注意点

ROE(自己資本利益率)における注意点

ROEを用いて企業分析をする際には、以下の点に注意する必要があります。

負債が多い企業でも数値は高くなることがある

ROEは、前述の通り自己資本に対する利益率の指標ですが、負債は数値に反映されません。

企業が多くの投資をおこない負債を抱えている場合に、自己資本が少なくなる傾向にありますが、この時のROE数値は高くなることがあります。

この場合には、負債を抱えてより高いリスクをとり利益を生み出していることになりますが、ROEだけを見ると数値が高く反映されるので、優良企業のように見えて投資する価値が非常に高いと感じることもあります。

業種によって数値は変動する

前述の経済産業省「2019年企業活動基本調査速報(2018年度実績)」の資料で見てとれるように、ROEは業種により数値が大きく異なります。

別の業種同士で数値の比較をするとあまり参考にならないので、ROEを用いて分析などを行う場合には同業種の平均値と比較検討する必要があります。

まとめ

ROEの目安になる数値や、業種別の基準、計算方法について解説しました。

ROEは、自己資本を利用してどれだけ効率のよい利益が得られているかを確認できる指標となる数値のことです。

また、ROEの平均値は業界によって大きく異なるので、前述のような経済産業省がリリースする資料を参考にして比較検討すると良いでしょう。

ROEの数値だけで企業の価値を決められることはありませんが、低い数値から上昇させることで経営の効率化を図れ企業の強みを生かせることに繋がるので、ひとつの指標にするとよいかもしれません。

ROEの改善などに悩まれている場合には、一度専門の企業コンサルタントに相談をすると安心です。

この記事の監修者

株式会社CxOgroup代表取締役・CEO水野雄貴

株式会社CxOgroup 代表取締役・CEO 水野 雄貴

・2005年株式会社商工組合中央金庫 入庫。
・東京・大阪・名古屋を拠点として全業種延べ500社以上に対する中小企業融資を実施。
・2016年に株式会社ModernStandard取締役CFOに就任、
・2019年同社を株式GAtechnologies(東証マザーズ:3491)に15億円にて株式譲渡。
・その後CFO×COO代行として携わった企業3社が2~3年以内に、各々企業価値を上げて2桁億円にてバイアウトを達成。
・累計100億規模のM&A企業に対するコンサルを実施。
・2022年株式会社CxOgroup設立、代表取締役CEOに就任。
・現在複数社のCFO×COO代行を兼任