日本経済のグローバル化が進む中で、国内企業においても明確な職務をつけるために欧米の役職を用いることが増えてきました。
近年では、CxOなどとよく耳にすることがありますが、実際にどのようなポジションであるのか分かりにくいという方も多いのではないでしょうか。
ここではCxOやその役目、CxOを導入するメリットや実際の導入事例などを解説します。
日本でCxOが広まった背景
日本でCxOが広まった背景としては、従来の日本企業の体質である「社長」「常務」などの役職制度では、一部の役職に職務が集中し過ぎて経営面に特化した運営を行えなくなってきたことも挙げられます。
また、東京証券取引所がコーポレートガバナンスの一環として、CxOの役員制度を推奨しているのも一つの理由とされます。
経済産業省より2022年に公開された「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」の中でも、CxOの重要性についてまとめられています。
このような背景の中で、CxOという名称が企業間の中で一般的になったことでCxOが広まったとされます。
CxOとはどのような役職?
CxOとは「Chief x Officer」の略で、「Chief」は組織の責任者のことを指し、「x」は業務や機能面を意味し、「Officer」は役員や執行役を意味します。
「x」には、管理する業務の異なる名称の頭文字が入り、それぞれが組み合わさってできた経営用語のひとつです。
そのために、日本の企業で言うところの社長や常務などの役職の名前のことではなく、「最高◯◯責任者」という意味になり、企業活動での最高業務責任者を総称する名称となります。
CxOと執行役員は異なる役職である
CxOと執行役員は、同じような職責と認識されがちですが実際には異なります。
CxOや執行役員は、法的な面でいうと企業に必ず配置しなくてはならないポストではなく、企業ごとに任意で選任される役職となります。
上記の面では同じ位置付けですが、CxOが経営者の一人として事業に総合的判断を行うのに対し、執行役員は事業の運営責任者として現場で指揮をとります。
CxOの役職とその役目
CxOの役職には、その役目によりさまざまな職種がありますが、一般的な役職は次のようなものが挙げられます。
CEO(最高経営責任者)
CEOとは、Chief Executive Officerの略で「最高経営責任者」のことを指します。
企業のトップとして全体的な事業戦略を立案し、実行に導くための最終的な意思決定を行います。
日本の企業では、CEOが代表取締役を兼任する事が多く、その際には代表権を有することもあります。
COO(最高執行責任者)
COOとは、Chief Operating Officerの略で「最高執行責任者」のことを指します。
日々の業務管理や、日常的な運営を統括する役職になります。
CEOが策定した経営・業務戦略を実務に落とし込んで執行する責任者になります。
CFO(最高財務責任者)
CFOとは、Chief Financial Officerの略で「最高財務責任者」のことを指します。
企業の資金調達や財務のデータ管理など、経営面での財務戦略の立案と執行を行います。
資金調達面での責任者でもあるので、企業価値を向上させる能力や融資先である金融機関や投資家と円滑に交渉するコミュニケーション能力も必要になります。
CIO(最高情報責任者)
CIOとは、Chief Information Officerの略で「最高情報責任者」のことを指します。
企業内でのセキュリティの整備や、IT技術を用いた情報戦略を策定します。
また、企業内でのIT資産などがある場合には、業務の最適化なども行います。
CTO(最高技術責任者)
CTOとは、Chief Technical Officerの略で「最高技術責任者」のことを指します。
企業を運営する上での技術戦略や、運用プロセスの構築、最新技術の導入などを行います。
経営者視点での、戦略的な技術策定をする能力が求められます。
CTOは、IT全般を幅広く整備するのでCIOの役割を兼ねるケースもあります。
CSO(最高戦略責任者)
CSOとは、Chief Strategy Officerの略で、「最高戦略責任者」のことを指します。
経営陣とともに、企業の戦略的方針の策定や実行へのプロセス構築を行います。
CEOが会社単位での戦略を策定するのに対し、CSOは会社単位から更に落とし込んでグループ単位での中長期的な戦略の立案を行います。
CLO(最高法務責任者)
CLOとは、Chief Legal Officerの略で「最高法務責任者」のことを指します。
法務部門の責任者として、法的リスクを最小限に抑える取り組みや、法的事案の処理や検討、法律が絡んだ問題の解決やアドバイスなどを担当します。
法改正に伴う対応や、コンプライアンスの強化、判例や新たな法律の調査なども業務に含まれます。
CMO(最高マーケティング責任者)
CMOとは、Chief Marketing Officerの略で「最高マーケティング責任者」のことを指します。
顧客や市場の調査をはじめとして、自社商品のサービスやブランディングの戦略立案、プロモーション戦略の実施など、企業全体のマーケティングの策定と実行を行います。
近年では、オンライン広告やデジタルマーケティングの需要が高まっているので、ITを利用したマーケティング戦略も業務範囲になります。
CBO(最高ブランディング責任者)
CBOとは、Chief Branding Officerの略で「最高ブランディング責任者」のことを指します。
企業の製品やサービスのブランディングマネジメントをはじめとして、企業自体のブランドイメージを維持するための商品管理を統括します。
CDO(最高デザイン責任者)
CDOとは、Chief Design Officerの略で「最高デザイン責任者」のことを指します。
企業のウェブサイトや、アプリケーションのUIに関する開発や既存UIのメンテナンス、企画及び改善などデザイン領域における策定をします。
CKO(最高知識責任者)
CKOは、Chief Knowledge Officerの略で「最高知識責任者」のことを指します。
知識責任者と一概に言われてもイメージがつきにくいですが、企業が有している技術や知識の他にも、社員が有しているノウハウを組織全体で共有する役割になります。
社員教育の徹底や、教育知識のデータベースを構築することなどを行い、それを企業価値の向上に用いる「ナレッジマネジメント」を統括します。
CHRO(最高人事責任者)
CHROとは、Chief Human Resource Officerの略で「最高人事責任者」のことを指します。
一般企業の人事部長とは異なり、より戦略的目線での人事登用や教育、人材活用を策定して企業価値の向上を図ります。
また、人材登用に伴い労働法に適用した就業規則の整備も役目のひとつとなります。
CAO(最高総務責任者)
CAOとは、Chief Administrative Officerの略で「最高総務責任者」のことを指します。
主に総務や経理面での管理責任者となり、株主総会や取締役会などの議事録を記録したり、保管が必要とされている文書の管理なども行います。
内部監査の実施なども役目とされており、不備があった際には業務改善まで具体的な指示を出します。
CxOを導入するメリットとは?
CxOには、上記のようにさまざまな職種があります。
では具体的にCxOを導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
職務の責任範囲が明確になる
従来からある企業体系の「社長」や「専務」などは、会社の規模や業種により具体的にどの範囲まで仕事をしているのか、その肩書からは分かりません。
一方で、CxOの「x」により担当する業務内容や責任の所在が明確になるので、業務に対する混乱や問題点が発生した際の解決に伴う責任の所在が明確となるので、対応に対する時間を削減することができます。
また、CxOは専門的な知識があるものをそのポストとして配置するので、管轄する業務を効率的に実施することができるようになります。
企業全体としての意思決定を行うスピード感が上がる
日本企業の中で、従来からよく目にする縦割り組織の体系では、組織間を横断できる人材がいないと部署間でトラブルが発生しやすい状態になります。
取締役が考える会社の経営と、CxOが行う業務遂行は完全に役割が分担されているので、企業間での意思決定がスピード感あるものになります。
企業と現場とでの橋渡しを円滑にすることができる
企業の社長やCEOが業務の知識に秀で過ぎている場合や、逆に乏しい場合などでは現場の現状に合わない政策や目標を押し付けることにもなります。
CxOは、各部門のスペシャリストになるので業務の実情に合わせた政策に噛み砕いて落とし込みます。
現場の声を反映させながら、企業が考える経営に反映させる橋渡しを円滑にCxOは行います。
経営面と業務執行面での職務分担ができる
CxO制度を用いていない企業では、経営者や取締役が業務執行までを行うケースが多いので、業務が集中することが多くあります。
事業計画書による計画遂行をCxOが担うことで、経営者や取締役は企業の経営業務に専念することができます。
自身が受け持つ職務を優先的に実行することで、バランスのよい企業体質にすることができます。
自社企業の専門分野を対外的に示すことができる
CBOやCDOなどの役職をおくことで、対外的にこの企業は自社のデザインやブランディングに力を入れている企業であると明示することができます。
また、メジャーではないCxOに、CSO(最高サスティナビリティ責任者)やCHO(最高幸福責任者)などのような役職もあります。
このような役職を配置することで、それぞれサステナビリティや幸福を重視した企業であると社内外に伝えることができます。
CxOの導入をお勧めする組織や企業
CxOを導入することで、さまざまなメリットがあります。
CxOを企業内で採用する際には、以下のような企業の場合におすすめできます。
今後起業を検討している
今後起業を検討している場合には、従来通りの企業形態でも良いですが、CxOを基軸とした組織を検討しても良いかもしれません。
CxOを配置することで、戦略的に強い分野を構築することが可能となり、オリジナリティある企業の立ち上げが可能になります。
グローバルな展開を予定している
近年日本企業もグローバル化が進み、販売やサービスの展開を海外に向けている企業も増えています。
対海外での取引の場合には、海外の企業で配置されているCxOのポストを利用することで、どのような役割を担う人材なのか分かりやすく示すことができます。
CxOを導入した企業例
1990年代の日本は、バブル崩壊の影響を色濃く受けて経済面が著しく悪化していました。
そのために、日本はアメリカで導入されていた内部統制にならい、CxO制度を導入するようになりました。
日本企業で初めてCxO制度を利用した企業としては、ソニーが先駆けとして挙げられます。
ソニーのCxO導入後の実績とCxOの認知度向上に伴い、日産自動車、日本マクドナルドなどの大手企業の他、セブン&アイ・ホールディングスや日本電産などのように欧米流の考えを企業統治に取り入れている企業での採用が増えています。
また、近年では政府のデジタル庁は官僚だけの人材登用だけではなく、民間人の積極的登用を行い、CTOとして当時グリーの取締役上級執行役員兼最高技術責任者の藤本真樹氏を就任させるなどを行っています。
まとめ
CxOとはどのような業務なのか、そしてその役目や導入した際のメリット、CxO導入企業例について解説しました。
CxOの「x」には、異なる業務や役割の頭文字が入り、日本語で「最高〇〇責任者」ということを指します。
各CxOは、それぞれの分野の専門家を配置することで責任を明確にし、取締がより経営業務に専念できる環境を作ります。
CxOを配置することで、企業全体としての業務スピード感が上がる効果や、企業と現場とで円滑に業務を遂行する効果、自社企業の専門分野を対外的に示す効果などが期待できます。
今後国内でも企業のグローバル化が加速すると考えられるので、市場の変化対応やイノベーションの創出などより専門家の意見を取り入れた戦略的な経営が必要になります。
どのようにCxOを導入してよいのかわからない場合などは、コンサルティングの専門業者に相談をしてとり進めると良いかもしれません。